ハルは“朝活”が好きな女の子。早朝から公園でラジオ体操に参加したり、歩いて山手線を一周したり。私が布団でモゾモゾしている時間に、ほとんど人のいないオフィスに小奇麗ななりで出社していたりする。 ハルの朝はパリでも早かった。朝シャンした長い髪を風になびかせてカフェに向かう。こちらがベッドでモゾモゾしていると「先に行ってますね♫」とひとりで出かけていく。パリでハルと訪れたカフェは12軒になった。 ハルはチャッピー(ChatGPT)に相談しながら進んでフランス語を話した。「郷に従うタイプなんで!」と爽やかに宣言し、店員氏と笑顔を交わし楽しそうだ。「これ“と”これくださいの“と”、は“エ”って言うんです」。 軽やかに語学を習得する彼女を横目に、すっかりフレンチを諦めた私は拙い英語で注文していた。…that’s all. この投稿をInstagramで見る DU PAIN ET DES IDEES(@dupainetdesidees)がシェアした投稿 ハル的ベストカフェは、『Du…
Category: パリ記(2026年)
美術館めぐり前編(ルーヴル美術館、オランジュリー美術館)《パリ記3》
滞在2日目はルーヴル美術館とオランジュリー美術館へ。 ルーヴルといえばレオナルド・ダ・ヴィンチの『モナリザ』。『ミロのヴィーナス』『サモトラケのニケ』もそれに続くだろうか。 昼前に入館した我々、午後の混雑を避けようとまずは『モナリザ』を目指すことにした。展示室をぐんぐん進む。 『モナリザ』の批評や考察には幾度となく触れてきた。下絵が隠れているとか、モデルが実在するとかしないとか、実は男性だとか。 一見穏やかな微笑みに世界中の人々が取り憑かれるのはなぜなのか。いざ「本人」と対面したら私は何かを感じるのだろうか。早まる足音、胸の高鳴り…! しかし実際、ゆっくり鑑賞する余裕などなかった。人混みをかき分けて最前列に辿り着いたものの警備員にすみやかな退室を促される。 さようならモナリザ。あなたをもっと観ていたかったよ。あと、意外と小さいんだね。 ルーヴルはもはや美術館ではない。“人類史万博”である。買ってきたガイドブックには「人類誕生以来の芸術創造の傑作を一堂に集め、すべての人を歓迎する普遍的な芸術館」とあった。そう、それだ。 紀元前7000年(!)の彫像、古代美術のユーモラスな動物の造形。革命を描いたドラマティックな油彩画。美男に仕上げられた貴族の肖像。 文字が生まれる前から、人類の祖先はこつこつと石を掘った。ものを見、手を動かし続けて、それに芸術と名がついた。それが権威や富の象徴に変わっても、人間は表現を模索し続けている。今この瞬間にも。 その後20分ほど歩いて、オランジュリー美術館を訪れた。ルーヴルが巨大過ぎたせいでオランジュリーのコンパクトさがありがたい。 クロード・モネの「睡蓮の間」はふたつある。それぞれ楕円形の展示室を4枚の『睡蓮』がとり囲む。絵画を見つめるほど没入感が高まってて静謐な気持ちになる。瞑想状態にも似た完璧な展示空間。…
沈まぬ太陽、パリに狂いて《パリ記2》
旅先の遊覧船が好きだ。乗るなら旅の序盤がいい。今からこの地を旅するのだと思えば気分も盛り上がる。韓国では漢江(ハンガン)、大阪の道頓堀川ですら船に乗った。パリに来たとなれば、セーヌ川クルーズは外せない。 マジックアワーを狙い、日没に合わせて21時半に乗船した。そう、5月下旬のパリの日没は21時半だ(!)。まだ明るく、船上から河岸に集まった人々の姿がはっきり見える。 若者ははしゃぎながらドリンクをあおり、船上レストランでは大人がグラスを傾ける。歌う人、踊る人、笑い転げる人。「楽しそうですねー」、「酔っ払ってセーヌ川に落ちないのすごくない?」。我々は景色以上に、明るい夜を謳歌するパリっ子に心を奪われていた。 そう、5月のパリは想像以上に暑かった。緯度でいえば北海道よりも北に位置するから東京の3月程度、トレンチコートを羽織るくらいの気候と思っていた。 しかし着いてみれば連日の30度超え。半袖、もはやノースリーブが適した暑さである。昼間の真白い日差しにしっかりと体力を奪われるのに、いつまでも日が暮れないから深夜まで遊んでしまう。
いま一番行きたい都へ《パリ記1》
円高を待っていては、いつまでも海外旅行に行けない気がする。未知のウィルスがいつまた蔓延するかわからないじゃないか。だからユーロ高は一旦置いておくことにした。金は後払いでなんとかなる。多分ね。 今回の旅のバディは同僚のハル。年の差ちょうど20。私の大学入学と同時期に産まれた20代女子だ。 ある時ハルに「タソさんと旅行したいです。どこ行きたいですか?」と聞かれて、私は「パリ。」と即答したのだった。彼女は「行きましょう、パリ!」と笑顔になった。話が早すぎるし、嬉しかった。 同じ部署に所属する我々、パリを見据えて仕事を片付けまくった。あんなに夢見たパリが間近に迫っているのに実感が湧かなくて、出発直前に『ポンヌフの恋人』と『ミッドナイト・イン・パリ』を観返した。 ついに私はパリ行きの飛行機に乗った。半日後には憧れのシャルル・ド・ゴール空港に降り立つ。



