去年おばあちゃんが入院してから毎月の帰省が習慣になった。金曜日の夜に新幹線で帰って日曜日の夜に東京に戻る。高齢のおばあちゃんとの時間をもっと持たなくてはと常々思っていたけれど行動に移せずにいた。一見不幸なアクシデントがきっかけをくれた。
帰省中は毎日施設に行く。ひとりで車を運転して行きふたりきりで話した時、おばあちゃんは、母が「死ぬまでここにいる契約」をしたと言って口をとがらせていた。そもそも2年までしか居られない施設だし、家族は帰宅を望んでいるのに。説得すると我に返ったように「…こういうとこにいると卑屈ンなっちゃうだよ」と申し訳なさそうな顔をした。家族が面会に来ない人も少なくないらしい。
以前はご近所さんのたまり場だった実家も、その面々も歳をとり、亡くなったり外出困難になったりして徐々に人が来なくなった。おばあちゃん不在の今は誰も訪ねてこない。外からの呼びかけに嬉しそうに応じるパタパタというスリッパの音も聞こえない。
正月に一時帰宅した時も、おばあちゃんは予定を一日早めて施設に戻ったと聞いた。口にしない寂しさや不安が、同年輩と居ると和らぐのかもしれない。93歳になった自分は想像できないけれど、その気持ちはわかる気がする。
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