ドクターの夏目漱石朗読

「『草枕』知ってるか? 夏目漱石の」と言いおもむろに冒頭部を読み始めた。「智(ち)に働けば角が立つ。情に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」

ドクターは「今のあんたはまさにこーいうこったな」と眉をあげた。頭に聴診器を当てるわけにもいかないから当然なのだが、このひと月であらゆる心理テストをやった。今日のTEG東大式エゴグラムの結果は、どうやら個性的なものだったようだ。「いいか。知識だけじゃなく、“知恵”も身につけろ」ドクターは言った。諭すように。


4 comments on “ドクターの夏目漱石朗読Add yours →

  1. 面白い。

    夏目漱石を引用する医者も珍しいけど、なかなか小粋な方ですね(笑)

    エントリーを読んで改めて、医者の先生ってのも人間だし、治療行為ってのは色々あるんだなぁ、と思いました。患者にしては「はよなおせや!」でしょうが…

    患者をやる気にさせてくれる人ってのが一番ありがたいですね。治せない治せるなんてのはなくて。

  2. >god24hrsさん
    この日はたまたま客が少なくて、ドクターとゆっくり話せたんです。
    「雨も降ってきてすいてきたところにあんたが丁度来た。
    だからここはひとつ面白いのやってみっか」と、テスト(と朗読)が始まったのです。
    自分の性質が病院の机の上にデータで晒されるのは興味深いです。
    無自覚の我がそこに出てくるので。

    今は障害の治療のために診察し、薬を貰いに行くわけですが、
    今回のようなケースなら、この人(医師やカウンセラー)とならまた会ってみたい、と思うことも治療の核心だと思っています。
    ちなみに・・・やることは小粋ですが風貌は小粋とは言い難いドクターです(コッソリ)

  3. そのフレーズ、NHKの教育番組「にほんごであそぼう」で、
    歌になって、毎日歌われているせいで、耳に残ってしまっているよ。
    名文だよね。
    それ以外にも、啄木の「ふるさとの山にむかいていうことなし」も
    歌になって、流れてる。
    朝から、しぶすぎます。

  4. >ちんみん氏
    子供向けの教育番組で!?
    さっそくNHKのサイトで調べたら、歌詞の説明に「人間関係の煩わしさを述べたもの〜」とあって
    やっぱり渋すぎると思ったよ。
    http://www.nhk.or.jp/kids/nihongo/song/index_28.html
    一応、2番では希望的にまとまってるんだね(笑)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。