明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち/山田詠美

人はそれぞれに異なって苦しい。だから苦しみの大小は誰とも比べられない。なにも問題のない家庭など存在するだろうか。親の離婚、再婚があり今でも距離を縮められずにいる自分の家族観を含め、平和で波のない家庭は容易に見つからない。

かつて幸せな家庭のサンプルのようだった澄川家が長兄の死を境に崩壊する。きょうだいが順に一人称で語る構成は、日常会話だけでは汲みきれない感情が描かれ互いの不理解が露呈する。これは特別に悲惨な家族のお話じゃない。「あなたたち」も心のどこかを突かれる身近な痛みの話だ。


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