Archive for the '今月の1枚' Category

今月の1枚・2013年9月

■ LE KEMONO INTOXIQUE / けもの(試聴) マイケル・ジャクソンのカバー「BEAT IT」がラジオで先行オンエアされるやいなや心を掴まれ予約購入を避けられなかった作品。プロデュースは菊地成孔。つぶやくようなヴォーカルの力の抜け具合が心地よくジャズを気負わせない。そして、ほぼ毎日繰り返し聴き続けても飽きがこない。音が部屋に溶け込むから停止ボタンは押されない。 その日がOL最終日(!)であると本人がTweetしたのはオンエア後の夏の終わりで、日常の報告が生々しく初々しかった、これからも続くけもの。


今月の1枚・2013年7月

■ 吹き零れる程のI、哀、愛 / クリープハイプ 役に入り込む俳優を憑依型などという。音楽はどうだ。このVo.尾崎世界観ほど多くの語り手を内包しているミュージシャンは滅多にいないと思う。 躍動する女性像(「憂、燦々」)がある。おたく青年(「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」)や、さえないOL(「社会の窓」)の視点がある。実家の犬に向かって “あてずっぽうに吠え” たりもする(「マルコ」)。誰にでもなれるし、なる。彼が曲中でひとりや一匹の心を行き来すれば日常が鮮やかにたち現れて世界の部分とすべてが見える。


今月の1枚・2013年6月

■ YOUNG FOOLISH HAPPY / Pixie Lott ランナーを見かける頻度が上がって、身体がほぐれる良い季節になったと実感する。梅雨が開ければランニングには厳しい夏がやってくるけれど、彼らは走ることをやめない。ランナーは路面の熱が去ったあとのナイトランの爽快を知っている。 音楽と共に疾走するランナーへ。NO MUSIC, NO RUN人間が聴いて走っているトラックはこれ。好みはボーカルあり&ちょい電子音そして心拍数に呼応するBPMの曲で「All About Tonight」はMVも含めテンションを上げてくれるパワーソング。


今月の1枚・2013年5月

■ 極東最前線 / eastern youth、ほか 「極東最前線」は現在も続くeastern youthの自主企画イベントで、主な出演バンドによるオムニバスアルバムが2000年に発売された。CD盤の最後の曲はbloodthirsty butchersの『さよなら文鳥』 吉村秀樹(Vo,G)逝去のニュースが発表されて、まだ24時間経っていない。人生の初ライブはブッチャーズで、下北沢SHELTERであなたを観た。爆音の中、泣きそうな顔でギターに絡みつく姿はどの音楽とも違っていた。14年も前。あなたの像がはっきり刻まれたあの日の客がここに居ます。


今月の1枚・2013年4月

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■ 憂、燦々 / クリープハイプ 「憂、燦々」はiTunesで先行配信され、よって明日の発売を待たずしてここに選出したい。本日の店着日から黄色の萌えジャケは売り場で目立ちまくるはずで、その光景まで計算済みだよナと思わせ、確実に来てる感が今このバンドを取り巻く。 ミュージックビデオ「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」は何遍も観た。「憂、燦々」にはタイアップCMの爽やかさはなかった。癖が強いのに突き放されない不思議に心に添う歌声とメロディは90年代後期のナンバーガールや中村一義を思わせる。


今月の1枚・2013年3月

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■ Aja / スティーリー・ダン 去年読んだベスト3をあげるならジャズミュージシャン菊地成孔の『スペインの宇宙食』を選ぶ。エッセイの快作、推敲一切なし(!)の書き散らかしテキストに気障で猥雑なエッセンスが乗る。 サザエさん症候群も蹴散らす日曜夕方18時半からの『菊地成孔の粋な夜電波』は横道からやってきた一見も夢中にさせるラジオプログラム ※4月から19時開始に変更。先月「音楽漢方菊地堂」で処方いただいたのは “Deacon Blues”、音楽漢方医菊地氏への相談は「煙草に代わる音楽を」でした。


今月の1枚・2013年2月

■ 歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007 / 斉藤和義 斉藤和義を知らなそうな友人に「斉藤和義って知ってる?」と聞いたら「知ってるさー『歌うたいのバラッド』いつも歌ってるっつの!」と突如歌い出したがウォエー!! ・・・アレなんだっけ? とまさかの勢いだけで内容が全くわからなかった。 仕方がないのでYouTubeで視聴し、流れでクリックした『ベリー ベリー ストロング ~アイネクライネ~』に聴き入った。自信喪失気味な主人公、佐藤君の日常も誰かの希望に結びついている。


今月の1枚・2012年12月

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■ ANGELIC / SPANK HAPPY 『スペインの宇宙食』は今年読んだ本の中で5本の指に入る快作だったが菊地成孔氏の本業はジャズミュージシャンである。そして『拝啓ミス・インターナショナル』はとにかく愛しい曲といえる。 Webサイトによると歌詞は “ベネズエラの貧民窟に住む少女がミスインターナショナルのベネズエラ代表に送ったファンレター” をほぼ引用している。お姫様への憧れは少女達の共通事項で、世界のあちこちの厳しい生活はこの大晦日も続いている。そこを取り出し歌に乗せるセンスが見事。


今月の1枚・2012年11月

■ Sphinx Rose / 浅井健一 ベンジーがライブで投げたマラカスをあるカップルがキャッチした。ラッキー。色々あるけど私たちは大丈夫! と彼女は確信した。でも何年か後に二人は別れた。ラジオ宛の手紙の中で彼女は、昔の彼氏と自分を『わたしたち』と呼んだ。誰も見ることのない意識の中で彼女はまだ彼と一対でいるんだ。リクエストの『Your smile』が流れた。 ベンジーのソロもいいよ、静かな曲もあって。彼が言ったのはこのアルバムのことだろう。だから少なくとも、二つの恋のメロディを含んでる。


今月の1枚・2012年10月

■ 幸せの鐘が鳴り響き僕はただ悲しいふりをする / Blankey Jet City 約3ヶ月で最新作(00年)からデビュー作(91年)まで遡った。同じアルバムを聞き続けて次に移るのだけどこれには長く足止めを食らうことになった。「風になるまで」は何度聴いても良い。 全体的に憂いが強く、存在が際だっている。ライブアンセム盛りの『SKUNK』と『C.B.Jim』の間に制作されたとは信じ難い。鮮烈な “女装ジャケ” は写真家・高橋恭司によるもの。それも選出理由に付け加えなければ、一枚だけ選ぶなんて無理!