なりたくない人間に

父親が席を外した時、見計らったように母と顔を見合わせた。まず、家族に内緒で生活費を送金してもらったお礼を言った。休職を打ち明けてから会うのは初めてだったので、見た目には変わらないこちらの様子に安心しているように見えた。

「いつまでも夫婦で秘密を持ってるわけにもいかないわけよね」と母は控え目に言った。父親に伝わることに咄嗟に拒否反応が出て、今は待って欲しいと頼むと母は頷いた。そして母の葛藤に気付かなかったことに動揺した。想像できない人間にはなりたくないと、いつも思っていたのに。


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  1. 人の気持ちまで想像できないときってあるよー。想像しちゃい過ぎて間違えることもあるし。(報告:引っ越し完了しました!片付けはこれからだけど〜)

  2. >あきC
    ありがと。
    この言葉を聞くまで、生活を助けてもらって安心してただけだったんだ。
    母親の気持ちに考え及ばなかった自分が情けなかった。
    「今は仕方ないわよ」って言ってくれるけど、働き出したらあらためて感謝を伝えたい。

    引っ越しお疲れさま!
    落ち着いたら遊びに行かせて。

  3. この前tasoが『人はみんなそれぞれ心があるからね。』って言ったよね。その人の立場や内情を思うと、自分の心だけでは物事を進めることができないのがわかってる分辛いと思う。
    あなたと話している端々に、私には相手を思うtasoの気持ちを感じてるよ。
    少しずつでもゆっくりでも、納得いける結果に向かっていくことを願ってます。

  4. >ファー氏
    組織の中にいると感情「だけ」で動くことはできないけど、今回は持ち前の感情過多をコントロールできなかった。
    みんないくらかは感情を抑圧しながら働いて(一部の人は無感覚に働いて)いるし、相手に気を遣ってばかりいては仕事が進まない。
    そのバランスが圧倒的に崩れてしまった。そして今でも回復している自信はない。
    仕事から離れて今は自分のことばかり考えていて、それも治療のひとつだとわかってはいるけど自分に落胆した気持ちになったよ。
    母親の表情は不安を増幅させるものではなくて、優しさの顔だったんだけどね。

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