加湿器で思い出すあいつのこと

加湿器を出した。毎年フィルターを買い換えるのが面倒でここ何年か使っていなかった。タンクの上でファンが回るだけの原始的なつくりで強弱ボタンもない。肌や喉によさそうな白い霧も見えない。ただひんやりとした空気を感じるだけ。

在りし日のハク氏はなぜか加湿器の水を好んで飲んだ。蛇口やシャワーヘッドも好きだが冬場はここが特別気に入っていた。久々に加湿器を床に置いた瞬間、向こうの部屋からハクが来る気配がしたのは自然なことだった。床をかちかちと歩く爪の音も聞こえた気がしたほどだった。かちかち。


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