冬の合法的快感

マスクをした方がいいと言われてその日、ふらふらした足でドラッグストアに行った。マスクを買うのは2年振りだ。首都圏の冬の車両では乗客の約半数がマスクを装着する。マスク姿で乗り込めば集団に馴染んで、瞬時に匿名性を獲得できる。

その快適さに目覚めたのは2年前。会議中に鼻の穴を膨らませても舌の先を出したままにしていても誰も気づかなかった。安心・安全・合法的にマスクの下で変な顔を繰り出した。売り場には厚いガーゼのマスクは無かった。乾燥した肌に耳掛けゴムが食い込む感触は、もう過去の痛みなのか。


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