春のひとたち

高校生のとき授業中の廊下に立ち尽くし、特になにもしないでいる不自然な大人がいた。彼は隣のクラスの副担任だった。教師の奇行を笑いのねたにする生徒もいたが戸惑いがみえた。先生が妻と別れた季節が春だったことは、あとから聞いた。

街では真新しい制服、風を受けて膨らむコットンシャツ。でもハプニングを含んでしまった春も同列にそこにある。パワーハラスメントでパニック障害を発症した春。復職の約束が覆され退職を強いられた去年の春。春の陽気に反して喪失感が満ち満ちる今年の春に哀しい校舎の廊下を思った。


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