からからの道

渋谷駅で電車を降りて我々は目当ての店にぐんぐんに歩いた。寒くて身体が固かったので途中でコーヒーを飲んだ。表参道ヒルズ裏手の路地と坂道はときどき仕事帰りに通った。見覚えのある蔦の塀に顔を上げるとむかし通った美容院があった。

その店は辞めた会社の目と鼻の先にある。解雇を告げられ口だけを動かし「仕方ないですね」と言ったきり近づいてもいなかった。社屋に向かって唾を吐こうとしたら粘ついた唾液が地べたに落ちた。帰りに書店で見た刊行誌に半べそで走り回っていた同期の名前があって目の奥がきんとした。


2 comments on “からからの道Add yours →

  1. 辛い時期ですね。

    何もできませんが、僕の口癖を贈ります。

    『私は(僕は)光を選択する』

  2. >Error302さん
    穏やかな光に包まれる安心感と、意思の強さを同時に感じます。
    思うだけではなくて、口にしたいと思います。口癖ですもんね。
    最近はとくに朝起きると、朝日のありがたさを感じます。
    心が曇っていた自分を変えてみたい。
    迷惑をかけた周りの大切な人たちも、優しい光が注ぐように。

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