この景色を壊して

その植え込みの「へり」は近所の通り道なのでほぼ毎日嫌でも目に入り、そのたび生々しい。夏の騒がしい祭りのさなか、そこに腰掛けた二人だけが泣いていた。突然やってきた別れに心がもがれて口を開いてもパクパクして言葉が出なかった。

あんなに満ちていた日々が、紙コップや空き缶で散らかった汚い道端であっけなく終わった。現場が視界に入らないよう強く目をつぶれば涙でまつ毛が濡れる。ホームレスが陣取っていればここをけがすなと憤り、近くにショベルカーが停車していればどうかこのへりもぶち壊してくれと願う。


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