緑の役割

住宅街に小さくて白いものが舞っていた。目に力を込めてピントを合わせるとたんぽぽの綿毛だった。こんなにひっそりと春は終わっていく。それだけで胸が詰まった。日中は汗ばむ今は初夏、各家庭の玄関先の同じように見える緑の葉も、季節ごとに硬いのや柔らかいのに入れ替わる勢力図。

目の高さまである雑草の一群は太陽を追って不自然な角度で一斉に伸びあがり、光を求めて腕を伸ばす群衆のように見え、「生命力」と思う。気付けば頭上を葉脈が覆っていて目を離せずにシャッターを切るとカメラの充電がしゅうんと切れた。


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