おクスリは偉大なり

このカレーを食べた直後、眠気が抑えられなくなり崩れるように机に突っ伏した。「もうしめますよ」と従業員に身体をつつかれビクッと起き上がった時には営業終了時間をとっくに過ぎていて周りには誰もいなかった。食堂で昼寝なんかしたのは初めてだ。寝ぼけ顔でオフィスに戻ると同僚が深刻な顔で詰め寄ってきた。食堂で自分の寝姿を見かけて「あれはヤバイ」と思ったらしい。「相当疲れてるっしょ。金曜でよかったよね明日休みだし……」と彼は眉間に皺を寄せた。

とても眠いのだ。薬の副作用で。抗不安薬と抗うつ薬はグルングルンに過回転するアタマの緊張を抑えてくれるが、気持ちを落ち着かせるために眠気を伴う。最初の数日間は仕事中に睡魔に襲われ、何度か首がカクンと前に倒れた。以前同じ薬を飲んでいた時は(休職や失業で)働いていなかったので眠いときに横になれたが今はそうはいかない。

だけど薬のお陰で8時間座り続けていられないほどの苦痛は過ぎた。矢継ぎ早に窮状を訴えた初診の問診で「……マア。そのへんは薬で改善されますから」と先生はアッサリ言った。私は救世主を崇める眼差しを向けたことだろう。こんなことなら早く薬を飲めばよかった。偉大だな、薬。今は自分に向く薬を探って毎週心療内科通いしている。


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