この生きづらさに名前

雨のぱらつく週末に吉祥寺の心療内科を訪ねた。インテリアは明るい木目調で、目にうるさいチラシやポスターもない。待合室には布張りのシングルソファが横一列に並び、受付には女性が二人も座っている。診察室は広く、二面採光で明るい。後方のスペースには「精神分析的精神療法」に使う寝椅子がゆったり置かれている。先生と向き合うと窓の外に植物の緑が見えた。頻繁に通った高円寺の心療内科は薄暗くて雑多で狭かった。ここならルンバも掃除しやすいだろう。あの診療所じゃ絶対無理だけど。

問診票に沿って先生と話をする。一連の身体の不調のこと。内科検査で異常が見つからなかったこと。会社組織への不信感や売上のプレッシャーを感じていること。上層部との面談で取り乱したことや、所得格差にショックを受けたことも話した。過去の通院歴と社会復帰への経緯。現在の生活環境、家族、友人付き合い、趣味。40分ほど語り倒した。

「社会不安障害」「身体表現性障害」「パニック障害」。先生が口にした病名は3つあった。以前パニック障害の治療中に服用していたのと同じ薬が処方された。説明書には「脳の過剰な興奮を抑制して発作をおさえる」とある。こうして必要に迫られて自分について話す場面はどっと疲れる。診察室を出たら腹を下した。

3年ぶりの心療内科。また、ここに帰ってきてしまったなと思う。だけど、生きづらさに名前がつけば、安堵もする。


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